秋風の木の葉を払う頃、御無事にて御志も変わらずおわしますことと推察いたし候。
久しく音信を欠き、かかる心もとなき道より申し入るること、御許し下されたく候。世の潮は荒く、事は急にして重く、筆に記さんこと憚り多く、他人の目に触れんことを恐れ候。
我が身の上は御案じ無用、恙なく、身の置き所も定まり居り候。されど国の難は、御身も我も思い及ばざる深きに至り候。これに応ぜんと、ひそかに志ある者どもを集め申し候えども、移ろう世の風向きの中にこの一団を保つこと、またひとつの苦労にて候。
近頃、幸いにも内々に力を差し向け得る身の上と相成り、最も要する所へ資を送る所存に候。ついては近日中、信ずべき使いの者、御門前に参るべく候。その者、次の言葉を申さば、我が使いと御心得下され。
「秋風は、御菊の香を運びけり」
今は筆を置き候。すでに慎みを越えて申し過ぎ候。この定めなき折、御身御自愛あるべく候。天の許さば、また便りを致すべく候。
草々不一
九月十四日
恵乃
この書、読み終えなば焼き捨て給え。
恵乃
〆